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| 化身学(アバタロジー)とユビキタスコンピューティング |
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偏在するコンピュータ
その本質はすでにcomputeするものではなく
コミュニケーションするものである。
偏在し化身する情報の神々との交感。 |
 北海道大学大学院工学研究科教授 |
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1941年長野県生まれ。66年北海道大学大学院工学研究科修了。
同講師、助教授を経て、79年同電気工学科教授。87年同情報工学科教授。97年より現職。工学博士。
著書に『マイクロコンピュータ講義』昭晃堂(1983)『コンピュータグラフィックス講義』コロナ社(1997)など。
近著に『情報リテラシーとプレゼンテーション』コロナ社(2003年)。 |
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化身学へ |
インド神話には、ビシュヌという最高神が登場する。ビシュヌは太陽神と考えられ、巨鳥ガルーダを乗り物とした。このビシュヌは、猪や亀、人獅子などの化身となって現れることでも知られ、この化身はアバター(アバタール)と呼ばれている。
コンピュータの世界で「化身」という意味でアバターという言葉が使われるようになったのは、決して新しいことではない。1980年にリチャード・ギャリオットが制作したRPGのスタンダード「ウルティマ」では、プレイヤーは有徳のアバタールとしてゲーム空間を闊歩する。オンラインゲームでは、世界中の数十万人のユーザが、アバターとして別の世界を生きているのである。
コンピュータゲームやCGの進化のなかで、アバターはVRにおけるもうひとつのアイデンティティを実現するものとして、位置づけられ、注目されてきた。アバターコミュニケーションによるチャットやゲームは、今では多くのユーザが参加する一般的なものとなり、韓国ではWindows Messengerにすらアバターが登場している。
このアバターランゲージ、アバターコミュニケーションの隆盛を見ながら、北海道大学大学院工学研究科教授・青木由直は「化身学Avatalogy」という学問が成立するのではないかと考えている。
青木がアバターそれ自体に関心をもったのは数年前だが、その研究のルーツは四半世紀に及ぶ。当時から青木の研究室には、中国からの留学生が多く在籍していた。その留学生とどうやって簡単にコミュニケーションができるか。青木がノンバーバル(非言語的)なコミュニケーションに関心をもつようになったのは、そこからだった。そのために、自ら手話も学んでいるほどだ。
青木が行っているITカロッツェリアの研究テーマ「ユビコン環境デザイン技術の開発と化身話による利用法の国際標準化」とは、ユビコン環境とは、結局のところコミュニケーションである、という概念が根底に存在する。機械対機械、人対機械のコミュニケーションをどうしていくのか。その核心に、青木はアバターコミュニケーションを位置させる。
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アバターコミュニケーションの先に |
ユビコン環境デザインのひとつの柱には、ユビコンプラットフォームのハードやソフトの開発がある。
「しかし、それは実際のモノで見ることで可視化しやすいという意味が大きかった。むしろそれをどのように応用していくのかという点が本当は重要なテーマ」と青木は言う。
たとえば02年度の成果として、そのプラットフォームを福祉機器分野で応用するための「呼気マウス」が、青木研究室と福本工業との共同研究で開発された。03年度は、さらにこの応用分野の幅を広げることが目標である。
その応用をコミュニケーション領域で深めようというのが、「化身話」なのである。
たとえば02年度の研究では、eラーニングシステムへの応用がテーマのひとつにある。このシステムは、化身話の表現をテキスト化したデータベースをXMLで構築し、表情や動作を仮想空間でアニメーションとして生成したり、複数の参加者(計算主体)が協調して問題解決するマルチエージェントシステムをベースとした「マルチ化身」を実現するもの。またより現実感のある表情や動作は、サテライトやソノークなどデジタルアニメーション制作企業との共同研究で行っている。
このようなアバターコミュニケーションの先に、青木は「異種間コミュニケーション」を見ている。
「犬とコミュケーションする『バウリンガル』が大ヒットしたように、人は周辺世界と常にコミュニケーションしたがっている。たとえば花が水が欲しいときには『水が欲しい』と言い、水をやると『ありがとう』と話すような異種間のコミュニケーションが化身学で成立します」
まだ青木のなかでも構想にとどまる「化身学」とは、単に工学のみで成立するのではなく、知的エージェントなどAI技術から心理学、社会学、美学、論理生命学までを含む総合的学であり、ここから産み落とされるのは、コミュニケーションに関するテクノロジーのシーズであるにちがいない。
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サッポロバレーの伝道者 |
青木は、1976年に北海道マイクロコンピュータ研究会を設立。日本におけるマイコン文化を先駆的に領導し、札幌に産業として根付かせたことで知られる。
このマイコン研究会を揺籃として生まれたソフトウェア企業は、パソコン発展期に全国的企業に成長した。青木は、札幌の情報産業が今日サッポロバレーとして全国に知られる基盤を作ったのだと言える。
当時、マイコン研究会に集まった学生や社会人たちは、マイコンボードの自作に興じながら、限定されたメモリ環境へのソフトウェアの組み込みを競った。彼らは、現在ITカロッツェリアの中心メンバーのひとりである山本強・北海道大学教授や、服部裕之や似鳥寧信らビー・ユー・ジーの経営者たち、ソフトフロント代表取締役の村田利文、ゲームメーカーであるハドソンの新規事業を牽引し続けたエンジニア・中本伸一取締役、日本のパソコン用フルカラーグラフィックボード開発の先駆者・シーワーク代表の岸本英一、呼気マウスを開発した福本工業代表の福本義隆たちである。まさにITモノ作りの原点ともいえる姿がそこにあった。彼らの多くが、ITカロッツェリアのプロジェクトに参集したのも、青木との強い結びつきのゆえんだろう。
「工学はモノ作りの学問ではあるが、従来のモノ作りの概念で言えば、大学の空洞化は著しい。一方では、モノ作りがバカバカしくなるような社会風潮があるが、その一方では従来のモノ作りではとらえきれない情報技術が生まれている。嫌でもその新しい状況に対応していかなければならない」と、青木は話す。
サッポロバレーの原点に存在したITモノ作り。その精神を継承し、グローバリゼーションのなかで急速に変化し続ける環境のなかにどのように屹立させることができるのか。その課題は大きい。 |
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■研究テーマ
ユビコン環境デザイン技術の開発と化身話による利用法の国際標準化 |
| ■研究目的 |
ユビキタス・コンピュータ(ユビコン)を札幌ITカロッツェリアで目指すIT工房の応用技術として展開するために、ユビコン環境を構築するためのプラットフォームとなるハードウェアおよびにソフトウェアを開発する。 それと平行して、開発したプラットフォームを各種分野に応用したユビコン環境のモデルを示しながら、札幌ITカロッツェリア独自のシステムと利用技術開発を目指す。
特に、ユビコンと人間間、ユビコン同士のコミュニケーションび新しい概念である化身話を利用する研究を行い、将来国際間で共通に通用する標準化に向けた基礎研究を行う。 |
| ■研究内容 |
(1)ユビコン環境埋め込みユビコン・チップのハードとソフトの開発
(2)ユビコン環境でのコミュニケーション技法(化身話技法を含む)の開発
(3)ユビコンの教育、娯楽、生活支援への応用技法開発
(4)ユビコンの農業、新利用法への応用調査 |
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