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研究プロジェクト

平成15年度共同研究テーマ
次世代組込みシステム開発環境の構築とモデル機器開発による機能評価
山本 強 可視化される次世代IT開発環境と
ITものづくりの未来
山本 強
北海道大学大学院工学研究科教授
IT開発プロセスの問題に挑む
 「このプロジェクトのコンセプトは、別に画期的なCADを作ろうというものではなく、IT開発プロセスの再検証・再整理を行い、そこからIT関連機器の次世代型開発環境を構築し、現在ITものづくりが抱えているさまざまな課題を解決しようというものです」―と、北海道大学大学院工学研究科・山本強教授は語る。
 たとえば現在のIT機器開発は、電子回路設計、実装CAD、ソフトウェアCADなど異なる開発環境で進められ、データの互換性もなく、手戻りも少なくない。とりわけ高機能・多機能化にともない組込ソフトウェアは肥大化し、開発の遅延や不具合の発生が目立つようになってきた。また複雑化するヒューマンマシンインタフェース(HMI)の仕様変更で、開発が大幅に後戻りすることも珍しくない。
 そこでオブジェクト指向に基づいて開発コンポーネントをオブジェクト化し、電子回路、基板設計、ソフトウェア設計、外形設計など異なるレイヤーのCAD環境をひとつのコンセプトで統一することで、要求仕様から最終設計まで一貫したラピッドプロトタイプ開発環境を構築しようというのが、このプロジェクトのポイントである。

モノが自ら語る究極のオブジェクト指向
 15年にはアラン・ケイが開発したSqueak/Crocket 環境を用いて、バーチャルな3D空間の中に回路設計やソフトウェアプログラムなどの2次元データと外形デザインなどの3次元CADデータを統合する開発環境を開発した。
 「これは、それぞれの開発コンポーネントの情報を、3Dユーザインタフェースで扱える環境に取り込み、モノの3次元データとソフトウェアなどの2次元データを自在に組み合わせて開発するシステムで、そういう概念にもとづいて作られているハード・ソフト一体の開発システムはこれまでどこにもなかった」
 次世代組込開発環境が可視化されることで、新たに見えてきたものもあった。たとえば現在ITものづくりの抱える問題に、ドキュメントの管理がある。この開発環境は、3Dのオブジェクトに設計データをバンドルさせ、そのオブジェクト自体をWeb上で流通させることができるが、これを一歩進めれば、モノそれ自体にドキュメントをバンドルさせて流通することが可能になる。製品そのものが自分自身に関する情報やデータをドキュメントとして持ち歩く、いわば“モノが自らを語る”のである。
 「例えば、携帯電話にRFID(無線タグ)を取り付けて、そこに製品情報やマニュアル、設計データなどを書き込んでおく。そうすればユーザーはいちいち分厚いマニュアルを開かなくてもすむし、デザイナーやエンジニアは実物さえあれば、その生い立ちや構造を知ることができる。オブジェクト指向の本質はそこにある」と山本教授は言う。

組込技術を札幌のITのメインストリームに
 ITプロダクツをラピッドに開発する技術とそのプラットホームやツールを生み出すこと―山本教授がこのITものづくりへのアプローチを決めたのは、サッポロバレーが四半世紀以上にわたって培ってきたハードウェアを含んだ組み込み系の開発が、札幌のIT技術のメインストリームとして位置づけられず、ソフトウェアの受託開発に流れている現状への危惧からである。
 「札幌のITは実はものづくりが弱い。ソフトウェアは製造ラインが要らない製造業であったから、これまで何とか全国に伍して戦えました。しかし札幌がハードウェアのものづくりをほとんどさわらずに、この先、世界や日本全体のマーケットで戦えるかは疑問です」
 日本のデジタル家電製品が世界マーケットで戦えるのは、ソフトウェアとハードウェアの複合的な強さである。ITカロッツェリアの研究成果によって生み出された「環境」やツールが、グローバル環境の変化に揺れる地域の企業に、未来の可能性を示す。そのことはこのプロジェクトに十分な意味をもたらしている。
■研究課題 A-1
異なる開発環境間でEDA情報を交換する情報流通システムの開発
■研究目的 ●「ITものづくり」課題を解決しうるIT関連機器開発環境の製作
●組込型IT機器のラピッド・プロトタイピングを実現する開発環境の基盤整備
■研究内容 電子回路設計、シミュレータ、実装CAD、ソフトウェアCADなどIT開発の目的の異なる開発環境で情報を交換するための共通情報流通システムを開発。14年度に開発した次世代組込システム開発環境では、開発するIT機器の使用や構造をUMLの概念で統一し、コンセプト情報を統一的に流通させることを可能にした。15年度はさらに、実データについての情報流通基盤の確立を中心に技術開発を行なった。
■参画機関 北海道大学、(株)マイクロネット
■研究課題 A-2
コラボレーション型IT機器を題材としたモデルプロダクト開発
■研究目的 ●IT要素技術と意匠、利便性の高い工業デザイン手法の融合
●組込用ファームウェアコンポーネント開発およびコラボレーション型IT機器を題材としたモデルプロダクト開発
■研究内容 モデルプロダクトにはVoIPを利用したネットワーク型音声会議システムを取り上げ、ハードウェアの構成〜試作〜OSの組込・変更〜ドライバ開発〜アプリケーション開発の一連の流れを次世代組込システム開発環境を用いて試作した。
■参画機関 北海道大学、(株)ソフトフロント 他
■特許一覧(出願・申請中含む)
(1)統合的製品設計支援システム
(2)3次元オブジェクト統合装置

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