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研究プロジェクト

平成15年度共同研究テーマ
福祉IT機器・デザイン技術の研究開発
伊福部 達 福祉工学のユニバーサル化による
産業創出への挑戦
伊福部 達
東京大学先端科学技術研究センター教授
4カ国語をリアルタイムに字幕変換する音声同時字幕システム
 平成16年2月19日〜22日にかけて北海道夕張市で開催された「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」で、多言語をリアルタイムに字幕変換する画期的なシステムが運用された。本研究プロジェクトのサブテーマの一つである音声同時字幕システムである。活用されたのはオープニングとクロージングのセレモニーで、日本語・英語・フランス語・韓国語の4カ国語を同時通訳し、スクリーンに日本語と英語で字幕表示するというもの。映画祭会場での会話はインターネットを通じて東京にいる同時通訳者に伝えられ、通訳されたものを札幌に転送し音声認識技術で字幕に変換、映画祭会場のスクリーンに表示する。夕張―東京―札幌をネットワークで結ぶことにより地方都市では確保が困難な高品質の同時通訳者を利用することができ、さらに訳語を「聞く」だけでなく文字として「読む」ことも可能にした。
 このシステムは、東京大学先端科学技術センター・伊福部達教授による札幌ITカロッツェリアの応用研究から生まれた。「当初は聴覚障害者向けの会議参加支援システムとして開発されたものですが、国際会議など、さまざまな分野での利活用が考えられ、障害者の在宅ワークの可能性を広げる」と伊福部教授は期待する。

福祉IT機器開発とITカロッツェリア
 本プロジェクトでは、聴覚、視覚、発声などに障害を持つ人々を支援するための福祉IT機器の開発に取り組んでいる。前述の音声同時字幕システム以外にも触覚ソフトアクチュエータやハンズフリー人工喉頭など事業化の可能性の高い製品がいくつも誕生している。
 触覚ソフトアクチュエータの研究は、指先に32ピンの振動子で文字の大きさや色などのリッチテキスト情報を送る触覚ディスプレイとテキスト音声変換の話速を自在に制御する触覚ジョグダイヤルを組み合わせたコンピュータ画面読み取り装置の実験として進められていたが、その一体型の「タジョダ」と名付けられたインタフェースは、国際特許として出願できた。五感情報通信への道がまた一歩前進したといえる。
 このような機器開発にあたって、札幌ITカロッツェリアの基盤研究は重要な意味をもつと伊福部教授は話す。
 「福祉IT機器などの場合は、とくに使い勝手やデザインが重要なポイントになってきます。しかし、開発の初期段階からユーザビリティに考慮した仕様を決めることはできない。むしろ、試作とテストを繰り返す中で完成度を高めていくべきものです。そういう点では、ITカロッツェリアの基盤技術を利用して何回もサイクルを回すことができるのは大きなメリットとなるでしょう」

「特殊な技術」からユニバーサルデザインへ
 さらに伊福部教授は「福祉IT機器は『特殊な人のための特殊な技術』だと誤って考えられています。その考え方を組み替え、ユニバーサルデザインへの道を開くことが重要」と語る。
 ユニバーサルデザインを指向する背景には、急速に高齢化するわが国の社会経済がある。伊福部教授は30年以上にわたり「福祉工学」という分野に携わってきたが、その中で強く意識していることは、「障害者とは特別な状況に置かれた人々を指すのではなく、健常者から高齢者になる過程で誰もが経験するもの」ということ。今後ますます障害高齢者が増加すれば、医療費や社会福祉の負担も大きくなる。就業人口が減ればわが国の経済にも大きな影響を与えかねない。
 伊福部教授は、「障害があっても仕事に就け、快適な生活ができるような環境を築くことができれば、日本の将来の産業につながるのではないか。ITはそれを実現することができるし、その技術を世界へ輸出することも可能だ」と考えている。
研究テーマ
福祉IT機器・デザイン技術の研究開発
■研究目的 どこでもいつでの使えるユビキタス福祉IT機器、および身につけて持ち運べる使い勝手の良いウェアラブル福祉IT機器の試作。

■研究課題 G-1
聴覚障害者用会議参加支援システムのユニバーサルデザイン化
■研究内容 聴覚障害者へのコミュニケーションの拡大の一つとして、視覚からの情報補助により会議参加を可能にする技術の開発。03年度は以下の3点について研究開発を行なった。

(1) 14年度に開発したシステムを、聴覚障害者のみならず健常者が国際会議等に参加しやすくするために、通訳が介在した音声字幕システムとして発展させる。さらにネットワークを使ったユニバーサルデザインとし、いつでもどこでも本システムを活用できるようなユビキタスデザインへの準備を行なった。

(2) インターネットなどの情報ネットワークを利用した場合、この音声字幕システムに介在する復唱者や通訳者が在宅ビジネスとして成立するかを調査。外出の難しい在宅の障害者が復唱者になることによって、新しい就労支援の可能性があるかを検討した。
■参画機関 東京大学、北海道東海大学、(株)ビー・ユー・ジー
■研究課題 G-2
触覚ソフトウェアアクチュエータによる感覚代行と触覚情報通信への適用
■研究内容 視覚障害者へのコミュニケーション拡大の一つとして、触覚からの情報補助により情報伝達を可能にする技術の開発を目指す。具体的には以下の3点。

(1) 14年度に開発した触覚ディスプレイ(※1)をUSBインタフェースによりパソコンや携帯電話などの情報端末に接続できるようにして、このアクチュエータから任意の振動バターンを提示できるようにする。
(※1)1mmおきに16列、2mmおきに4行配列した指先装着型感覚ディスプレイ

(2) この触覚ディスプレイと情報端末を接続して、ウェアラブルでフレキシブルにするとともに、マイク・カメラ・触覚センサを付加することにより、ハプティックディスプレイ(※2)を実現する。
(※2)手でもって自由に動かしながら、動かしている位置とその位置での各種の情報を触覚を介して表示できる触覚ディスプレイ

(3) 以上の感覚代行に加え、VRやロボティクス、五感情報通信、アート、アミューズメントなど広範な利用方法の可能性を探る。
■参画機関 東京大学、北海道工業大学、札幌医科大学、北海道東海大学、昭和大学、(株)ティジー、(株)ビー・ユー・ジー、(株)日本製鋼所室蘭研究所
■研究課題 G-3
ハンズフリー人工喉頭の試作とウェアラブル音声生成器への展開
■研究内容 音声を発することのできない障害者へのコミュニケーションの拡大の一つとして、音声生成を可能とする技術を開発する。具体的には以下の2点。

(1) 14年度の検討事項にもとづいてハンズフリー人工喉頭のプロトタイプを試作するとともに、喉頭摘出者に適用してユーザビリティの観点から評価する。

(2) ハンズフリー人工喉頭の概念をさらに広げて、テキスト音声合成の理論にもとづいて、5本の指で、楽器のように扱って任意の声を生成するウェアラブル音声生成装置の可能性を検討し、喉頭摘出者のみならず筋委縮患者、脳性麻痺者、発語失行症患者でも簡単な指の操作でどこまで音声コミュニケーションができるかを調べる。
■参画機関 東京大学、北海道立工業試験場、北海道東海大学、(株)電制
■特許一覧(出願・申請中含む)
(1)音声映像変換装置および方法、音声映像変換プログラム
(2)TAJODAを国際特許として出願

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